はじめに

私はドラクエの音楽が好きです。そのドラクエ音楽好きが高じてこんなページを作ってしまいました。中でも私が特に好きなジャンルである戦闘曲について、ここでは語ってみたいと思います。

最初に断っておきますが、私はあまり音楽の知識を持っていませんので、技巧面でどう優れているのかを語ることはできません。その代わりドラクエに関する知識はそこらの音楽評論家よりも豊富だと思いますので、ゲーム本編との関連性に着目し、演出効果などについても語っていきたいと思います。

目次

凡例

主な対戦相手
当該曲が流れる戦闘の対戦相手を表します。
激しさ
曲調の激しさを5段階評価で表します。高ければ良いというものではありません。
怖さ
曲調の怖さを5段階評価で表します。高ければ良いというものではありません。
勇ましさ
曲調の勇ましさを5段階評価で表します。高ければ良いというものではありません。
総合評価
要するに、筆者のお気に入り度です。

DQ1

戦闘

主な対戦相手ザコ敵全般、竜王(変身前)
激しさ★☆☆☆☆怖さ★★★★☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★☆☆☆

あまり戦闘という感じのしない、異色の曲です。と言ってもこの曲こそがドラクエ戦闘曲の原点ですから、異色という言い方はおかしいかもしれません。

低音が静かに這い回る不気味な曲調が、たった一人で戦う勇者の孤独感を演出しています。敵も一度に一匹しか出ませんから、戦闘は常に一対一。昨今ありがちな激しい曲調よりも、こちらの方がDQ1のシステム的にはしっくり来るような気がします。

竜王

主な対戦相手竜王(変身後)
激しさ★★☆☆☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

竜王の恐ろしさを表現することだけに特化した曲、といった印象です。メインテーマを演奏するパート数が徐々に増えていく演出は、竜王の攻撃が次第に苛烈になっていく様を表現しています。

あと、冒頭の銅鑼の音が「出たー!」という感じでいいですね。大魔王が変身するというのはRPG黎明期の当時はかなりのサプライズだったと思うので、まさにこの銅鑼の音のような衝撃を当時のプレイヤーは受けたのではないでしょうか。

DQ2

戦い

主な対戦相手ザコ敵全般、アトラス、バズズ、ベリアル、ハーゴン
激しさ★★★★★怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★★☆

DQ1の『戦闘』とは打って変わって、非常に激しい曲になりました。これは味方パーティが3人に増え、敵も同時に多数出現するようになったことと関係があるのでしょう。1フレーズは短いのですが、この短い間に、やや唐突にも感じられるほどに激しく音が乱高下します。剣と剣のつばぜり合いや魔法の飛び交う様が目に浮かぶような臨場感があります。

オーケストラ版ではドラムセットを起用し、ドラムとハイハットシンバルでリズムを刻んでいます。DQ7以降の作品でこのような形式がよく登場しますが、DQ2の時代ではかなり珍しいと思います。

死を賭して

主な対戦相手シドー
激しさ★☆☆☆☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★☆☆☆

邪教の神というイメージにぴったりな、静謐さをたたえた曲調です。激しさ大爆発の『戦い』とは好対照です。ハーゴン戦までずっと『戦い』を聴き続けてきたプレイヤーにとって、突然のシドー登場、そして聞こえてくる『死を賭して』という状況には、きっと背筋の凍るような思いをしたことでしょう。

DQ3

戦闘のテーマ

主な対戦相手ザコ敵全般、カンダタ、ボストロール、やまたのおろちなど
激しさ★★★★☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★★☆

錯乱状態に陥ったかのような6,7小節目の装飾音がなんとも印象的な曲です。麻薬的な高揚感と心地よさすら感じられ、聴いているとテンションが上がります。

それと、これは意外と知らない人が多いのですが、4小節目から始まる主旋律冒頭の3音は、DQ1のフィールド曲『広野を行く』の冒頭3音と同じ音形です。DQ3と言えば、ギアガの大穴から飛び込んだ先に現れるアレフガルドの地が印象的ですが、実は最初からこの曲がネタバレをしていたわけですね。

戦いのとき

主な対戦相手バラモス(SFC版)、神竜など
激しさ★★★★★怖さ★★★★☆
勇ましさ★★★★☆総合評価★★★★☆

リメイク版で追加された曲です。私にとっては、この曲はバラモス戦の曲というイメージが強いですね。前奏部分の小刻みに揺れる弦楽器の伴奏が、バラモス戦の背景でゆらめいている炎を連想させます。

上記の評価の通り、激しさ、怖さ、勇ましさの3要素が満遍なく取り入れられていて、満足度の高い一曲です。一回聴くだけでお腹いっぱいという感じ。また、曲の最後に『ダンジョン』のモチーフが使われていることも特筆すべきでしょう。

勇者の挑戦

主な対戦相手ゾーマ
激しさ★★★★☆怖さ★☆☆☆☆
勇ましさ★★★★★総合評価★★★☆☆

実に勇ましい曲です。同じラスボス戦の曲でも、『竜王』『死を賭して』はボスの恐ろしさ、強大さを表現することを意図した曲調であったのに対し、この『勇者の挑戦』は曲名通り勇者側の視点に立った勇猛果敢な曲調になっています。

この勇者側の視点を裏付けるのが、『戦闘のテーマ』にも用いられていた『広野を行く』のモチーフです。主旋律の最初の3音の音形が共通していますね。さらに、オーケストラ版では『ロトのテーマ』のファンファーレまで挿入されています。これらは、ゾーマとの戦いがアレフガルドにおけるロト伝説として未来永劫語り継がれていくということを暗示しているのだと言えるでしょう。

DQ4

戦闘 -生か死か-

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★★☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★★☆総合評価★★★★☆

『戦闘のテーマ』を聴くと私はテンションが上がると書きましたが、この曲もまた然りです。

特徴的なのが冒頭、4小節に渡る長い半音階です。これがプレイヤーを臨戦態勢にさせ、戦闘の緊張感を一気に高めます。その後も半音階が頻繁に顔を出し、緊張から解放されることがありません。この緊張がピークに達する頃にやってくるのが9/8拍子。緊張の糸が切れ、一気に暴発するイメージです。

立ちはだかる難敵

主な対戦相手中ボス全般(PS版、DS版)
激しさ★★★★☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★★☆☆

リメイク版で追加された曲です。ティンパニやスネアドラムといった打楽器の活躍が光る曲ですね。そういえば、同じリメイク版限定曲である『戦いのとき』でも、ティンパニの乱打が大変印象的でした。FC版から存在していた他の曲と比べるとかなり趣向の異なる曲調なので、PS版発売当時FC版未プレイだった私でも、この曲がPS版で追加された曲なんだろうと予想がつきました。

『戦闘 -生か死か-』のアレンジになっているのは言うまでもないでしょう。

邪悪なるもの

主な対戦相手エスターク、デスピサロ(最終形態除く)
激しさ★★☆☆☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★☆

ゆったりとしたテンポながら、一音一音が力強く、圧倒されるような存在感のある曲です。ベース音が一定の音程を一定の間隔で刻んでおり、これがまるでデスピサロの足音のように聞こえてきます。しかしその足取りは鈍重で、どこか幼さも感じられます。長い眠りから目を覚ましたばかりのエスタークや、進化の秘法を使ったばかりのデスピサロが、まだ自身の体を制御しきれていない様子を表現しているのでしょう。

悪の化身

主な対戦相手デスピサロ(最終形態)
激しさ★★★★☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

『邪悪なるもの』と曲調は似ていますが、テンポが速くなり、力強さも増しました。発展途上だったデスピサロが、ついにすべての力を解放したといったところでしょう。『邪悪なるもの』ではベース音が4分音符で刻んでいましたが、この曲では8分音符になったことで、より緊迫感のある曲に仕上がっています。

デスピサロの容姿とこの曲があまりにもマッチしすぎていると感じるのは私だけでしょうか。DQ4を全く知らない人でも、この曲からイメージされるモンスターを描けと言われたらあのデザインが出てくるんじゃないかというほどです。

DQ5

戦火を交えて

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★★☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★★★

怒鳴るような金管楽器の存在感が凄まじいです。しかし、怖さのようなものはほとんどなく、むしろ遊んでいるかのような楽しさすら感じられます。以前とある方が、「幼年時代の主人公がひのきの棒で戦っているイメージ」とこの曲を評していましたが、私も全く同感です。カジノのスライムレースでこの曲のアレンジが使われているのも納得です。

やや話がそれますが、SFC版では洞窟などで戦闘する場合、この曲にリバーブがかかるんですよね。地味ながら、私はこの演出が好きでした。

不死身の敵に挑む

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★★★怖さ★★★★☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★★★☆

『戦火を交えて』と同様に、力強い金管楽器の叫びが闘争心をかき立てます。しかし、この曲では楽しさのようなものは一切なく、間断ない敵の攻撃に必死に耐えているかのような印象を受けます。まさに曲名通り「不死身の敵」と相対している様子が伝わってきます。

SFC版だと全体的に音量が小さく、打楽器パートもないので、全く別曲のように聞こえます。緊張感があるという意味で、オーケストラ音源とはまた異なる趣がありますね。また、控えめなSFC音源の方が、ボスを攻撃したときの「ピシィー!」という音がよく通って爽快感も大きかったように思います。

大魔王

主な対戦相手ミルドラース(最終形態)、エスターク
激しさ★★☆☆☆怖さ★★★★☆
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★☆

序盤から中盤にかけて、伴奏が『竜王』と同じです。まさに原点回帰のラスボス曲だと言えます。

中盤からはいわゆる『悪のモチーフ』を多用しています。雪の女王が現れるときや、ジージョの家に魔物が来たときに流れるあのMEですね。4回繰り返して緊迫感を高めたのちにやってくるフーガ形式の部分がこの曲のハイライトです。『悪のモチーフ』が一気呵成に押し寄せてきますが、なぜか非常に美しく、天にも昇るような奇妙な心地よさすら感じられます。この美しさにばかり注目しがちですが、その裏では死闘の中で文字通り「昇天」する仲間が続出する地獄絵図が展開されているのだろうと思うと、寒気がしますね。

DQ6

勇気ある戦い

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★☆☆

DQ5までの戦闘曲とは大分方向性が違うなあと感じる一曲です。力で圧倒するのではなく、小技で翻弄するというようなイメージ。

伴奏は根音を八分音符でひたすら連打するというもの。シンプルですが、これが疾走感を出しています。また、主旋律の最初と最後に織り込まれた『悪のモチーフ』も特徴のひとつですね。DQ6の『悪のモチーフ』は、サンマリーノでペロが倒れたときなどに流れるあのMEのこと。DQ6の楽曲はこのモチーフが含まれているものが多く、組曲としての統一感を出しています。

敢然と立ち向かう

主な対戦相手ムドー
激しさ★★★☆☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★★★★総合評価★★★☆☆

オープニングで黄金竜に乗るときの曲『ムドーの城へ向かう』を主旋律の最初に持ってきています。そのため、まるで黄金竜とともに戦っているような、力強さと壮大さを兼ね備えた曲になっています。しかし、その途中で訪れる大音量の『悪のモチーフ』のあとは、ひたすら同モチーフの連打。強気な調子はどこへやら、ムドーに現実を見せられて絶望の淵へ追い込まれていきます。

魔物出現

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★★☆怖さ★★★★☆
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★★

気違いじみたテンションで音が上下する前半部が最高な曲です。和声的にはきっと意味不明なことになっているんでしょうが、一方でリズムは統率がとれており、このギャップによって「狂っている」という印象が強調されます。

後半部はコミカル。この部分をボスが見せる一瞬の隙と解釈するか、不敵な余裕と解釈するかは、ボスごとに異なるでしょう。私の印象で言えば、例えばジャミラスなら前者、デュランなら後者といった感じです。なお、『悪のモチーフ』もこの後半部に登場します。

魔王との対決

主な対戦相手デスタムーア(最終形態)
激しさ★★★★☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

イントロからラストまで、全編を『悪のモチーフ』のみで書き上げた大曲です。まさしく、悪の根源たるデスタムーアにふさわしい一曲ですね。

とにかく圧倒的な破壊力でガンガン押してきますが、オーケストラ版では、木管楽器主体の穏やかな間奏が挿入されています。これがちょっとした箸休めになっていて、また独特の味わいがありますね。ところで、私はこの間奏が「デスタムーア本体が倒されてからザオリクで復活するまでの間」を表現しているのだと解釈しているのですが、いかがでしょうか。

DQ7

血路を開け

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★☆☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★☆☆

どことなく楽しげな曲です。DQ7の楽曲は全体的に明朗快活なものが多く、DQ7というゲームの雰囲気を作り出しています。

オーケストラ版だとこの曲と『強き者ども』がメドレーになっていて、そのつなぎとして、洞窟の曲『迫り来る死の影』の一節が挿入されています。戦闘曲に洞窟の曲の主題を取り入れるというのは、リメイク版DQ3の『戦いのとき』を皮切りに、DQ7以降の作品でよく見られるようになりますね。

強き者ども

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★★★怖さ★☆☆☆☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★★★★

冒頭の強烈な不協和音連打に始まり、その勢いで最後まで突っ走ってしまうようなノリのいい曲です。曲調もコミカルで、戦闘というよりただふざけているだけなんじゃないかと思わせられます。

ところで、DQ7ではボス戦闘曲であるこの曲を、通常戦闘曲の『血路を開け』よりも先にゲーム中で聴くことになるんですよね。最初の戦闘であるスライム×3戦では、実はボス戦闘曲であるこちらの曲が使われていました。初めて見たモンスターに当惑している主人公たちの心境が、この曲のおどけた感じ、あるいは煮え切らない感じとぴったりマッチしています。

オルゴ・デミーラ

主な対戦相手オルゴ・デミーラ
激しさ★★★★☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★★

不協和音の嵐といった感じの不気味な音楽です。木管楽器による震えるような叫び声あり、弦楽器による窒息するほどの緊張感あり、金管楽器による身を切り裂かれるような咆哮ありと、ありとあらゆる方法でこちらを恐怖に陥れようとしてきます。

この曲はいわゆる「ラスボス曲」ですが、DISC1のオルゴ・デミーラ戦でも使用されていますし、DISC2でも第1形態から最終形態まで一貫してこの曲です。手抜きと言うなかれ、私はこれが見事な心理的効果を与えていると思います。他のシリーズでは最終形態に突入すると音楽が変わるので、「これを倒せばクリアだ!」とプレイヤーのモチベーションも一気に高まるわけですが、DQ7ではそれがありません。ましてオルゴ・デミーラの外見は、一見してこれが最終形態だとはわかりにくいですし、(デスピサロのマイナーチェンジを除けば)シリーズ最多の第4形態まであります。第3形態を倒せばエンディングだと確信していたのに、その後も依然として続く死闘、しかも変わらない音楽……。精神的に与えるダメージは絶大でしょう。

DQ8

雄叫びをあげて

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★★☆

調号上はイ短調ですが、いきなりシの音から始まるなど、前半は調性がぼやけがちです。しかし後半の冒頭、これ以上ないというほどの完全なイ短調が訪れます。それまで繰り広げられていた混沌からここで一旦統制がとれた感じになり、呼吸を整えながら次の攻撃に向けた作戦を仲間同士で相談している様子を想像させます。DQ8の戦闘シーンでは仲間が横一列に並んでいて、それがちょっと滑稽にも思えるのですが、統制されたこの曲の後半部のおかげで、私はそれほど違和感を感じませんでしたね。

難関を突破せよ

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★★☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★★☆☆

ドラムセットをフル活用した伴奏が印象的な曲です。不気味な和音が鳴り響く中でのドラムの疾走感が、主人公たちの必死の抵抗を表現しているようにも感じます。

『雄叫びをあげて』と共通のモチーフが途中で使われています。オーケストラ版では『雄叫びをあげて』とこの曲がメドレーになっていて、間奏にもこのモチーフが挿入されています。このような手法はもうお馴染みですね。

ドルマゲス

主な対戦相手ドルマゲス、暗黒神ラプソーン(小)など
激しさ★★★★☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★★

強烈な存在感によって圧倒される曲です。音楽の中に主人公たちの感情は一切存在せず、あるのは眼前のモンスターの放つ威圧感だけです。スローテンポながら、一歩一歩追いつめられていくような恐怖感があります。ドルマゲスと言えばこの曲、というイメージがあっただけに、DQMJ2でドルマゲスがこじんまりとしたサイズになってしまったのが残念でなりませんでした。

変身前のドルマゲス戦などで流れる曲『忍び寄る影』の主旋律が挿入されていたり、『雄叫びをあげて』の前半部で多用されている5音からなる音階が使われていたりと、曲調の大胆さとは裏腹に実に芸が細かいと思います。

また、打楽器の強弱の付け方が効果的だと感じます。ときには恫喝するかのように叩き鳴らすかと思えば、押し殺し切れなかった殺気がわずかに外に漏れ出すかのようにそっと鳴り響くこともあり、一層恐怖心をあおります。

おおぞらに戦う

主な対戦相手暗黒神ラプソーン(最終形態)
激しさ★★★★☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★★★総合評価★★★★★

DQ3の名曲『おおぞらをとぶ』のメロディがさまざまにアレンジされて織り込まれた曲です。『ドルマゲス』は敵の威圧によって一方的に攻め込まれているような印象を受けますが、この曲は逆に主人公たちが一方的に攻め入っているような力強さを感じます。何と言っても神鳥レティスとともに戦っているわけですから、この気持ちの高ぶりを音楽面でも後押ししてくれていることは、プレイヤーにとっては頼もしい限りでしょう。

大魔王との決戦にふさわしく、金管楽器が凶悪に鳴り響く場面が多いものの、メロディが『おおぞらをとぶ』なので怖さはあまりありません。途中、暗黒神の必死の抵抗を表現するかのように『ドルマゲス』のテーマが流れますが、それもわずか8小節で終了。その直後にほぼ原曲どおりの『おおぞらをとぶ』が流れ、脅威はあっさりと消え去ります。

それにしても、およそ戦闘とは縁のなさそうな『おおぞらをとぶ』を用いて、これほど壮大な戦闘曲を作り上げるとは、すぎやま氏のセンスには恐れ入るばかりです。

DQ9

負けるものか

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★☆☆

ドラムが刻むリズムが特徴的な曲です。オーケストラも良いですが、ロックやジャズアレンジも聴いてみたいと思わせられます。DQ9はやり込み要素が膨大なので、数十時間といった単位でこの曲を聴いているプレイヤーも多いと思いますが、それだけ聴いても不思議と飽きがこないというのがすごいところです。曲想の変化に富んでいるということが一つの要因でしょう。

曲想の変化に関して、過去のDQシリーズの戦闘曲と似たフレーズがところどころで使われています。例えば『勇気ある戦い』の最後に登場する、『悪のモチーフ』4連打で下がっていく部分と似たフレーズが、中盤に挿入されていますね。DQ9の曲全般に言えることですが、このように過去のDQシリーズの音楽を想起させるような部分が取り入れられており、往年のファンは思わずニヤニヤさせられます。

渦巻く欲望

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★☆☆☆総合評価★★☆☆☆

冒頭が『不死身の敵に挑む』と非常によく似ています。私が初めてプレイしたときは、「あれ?なんでDQ5?」と思ったほどです。この部分から生じる異様な緊張感を最後まで維持し続けるという、一風変わった曲です。

ユニゾンの部分は一気に畳み掛けるような強烈なインパクトを持っていますが、私がそれ以上に衝撃を受けたのが、コンサートでのすぎやま氏の指揮です。このユニゾンの部分では、文字通り全身を使って迫力のある指揮をしておられました。興味のある方は、ぜひ一度コンサートに足を運んでほしいですね。

決戦の時

主な対戦相手堕天使エルギオス
激しさ★★★★☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★★★総合評価★★★★★

いきなり衝撃的な音とティンパニの乱打が飛び出し、一体どうなることかと思った矢先に、天使界の曲『天の祈り』のモチーフを使った主旋律が流れ始めます。星空の守り人としてこの戦いに勝利しなければならないという使命感を強める一方、敵のエルギオスももともとは天使だったことを思い出し、感傷的な気分にさせられます。その後も同じモチーフが繰り返されますが、最初の一回以降は耳障りな対旋律も聞こえてきて、居心地の悪さを感じます。

後半部は、なんとあの『序曲』のテーマが使われています。あのメロディが聞こえてきた瞬間、ほとんどのプレイヤーがはっとさせられたことでしょう。プレイヤーのテンションを上げる手段としてはまさに反則的な一手を打って出たわけですが、ここでこの反則技を使ってしまって、DQ10以降は大丈夫なんだろうかと不安に感じたのは私だけではないはずです。とは言え、『序曲』を投入するに値するスケールの大きい曲であることは間違いなく、DQの戦闘曲の集大成に位置づけるにふさわしい意欲作だと思います。

DQ10

刃の旋律

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★☆☆

冒頭のトランペットが非常に印象的で、まるで戦いの狼煙のよう。いざ戦闘!という気分にさせてくれます。その後は小気味よいドラムスのリズムに乗せて、緊迫感のある弦楽器のメロディが続きます。軽快でありながら程よい緊張感を醸成してくれるこの曲は、バトルフィールド内を縦横無尽に走り回るDQ10の戦闘システムにぴったりで、特にパーティプレイにおける戦闘を非常に楽しいものにしてくれます。

渾身の力を込めて

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★★☆怖さ★★★☆☆
勇ましさ★★★☆☆総合評価★★★★★

冒頭の怒鳴り散らすようなトランペットに始まり、中盤までは金管楽器の容赦無い攻撃が続きます。野獣が雄叫びを上げるかのような力強さに圧倒され、もはやこれまでか…と思ったとき、『アンルシアの恵み』(オープニングムービーで流れる曲)の一節が聞こえてきます。このアンルシアという存在が何者なのか、まだゲーム中でも明らかにされていませんが、きっとアストルティアの世界を守護する大いなる存在なのでしょう。そういえばオープニングムービーでも、ピンチに陥った主人公を突如現れた暖かい光が包み込み、敵の攻撃から守るという演出がありました。こうして守護者による強力な加護を受けた主人公たちは再び戦線へ復帰していく、というのがこの曲のあらすじといったところでしょう。

ボスとの激しい戦闘の中でふっと守護者のメロディが聞こえる…という演出は、『勇者の挑戦』『おおぞらに戦う』『決戦の時』といったラスボス曲と通じる部分があります。ラスボスより強い中ボスが続々追加されるMMORPGならでは、といったところでしょうか。

死へのいざない

主な対戦相手冥王ネルゲル
激しさ★☆☆☆☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

戦闘曲としてはかなり異彩を放つ一曲。木管楽器と弦楽器によって醸し出される不気味な雰囲気。魔障によって辺り一面にもやがかかったような重苦しさ、居心地の悪さを感じます。そして突然鳴り響く金管楽器の一喝。まるで見えない敵と戦っているような閉塞感。曲名の通り、死へとつながる無限回廊を進んでいるような気分にさせられます。

『死の世界より来たる者』(ラスボス直前のイベント曲)と共通するモチーフが随所に用いられています。次で紹介する『冥府の王』でも同じ事が言えます。冥王の対面から戦闘、形態変化に至るまでの一連の音楽を共通的なモチーフでまとめ上げることで、終わりの見えない恐怖感が一層強調されているように思います。

冥府の王

主な対戦相手冥獣王ネルゲル
激しさ★★★★☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★☆

ついに正体を現した冥獣王ネルゲルとの戦闘曲です。『死へのいざない』でも触れたモチーフが冥獣王の雄叫びのように響き渡り、場を震撼させます。その後は行進曲風の曲調となり、少しずつ主人公たちを押し込んでいきます。先述のモチーフが徐々に音量を上げながら繰り返される場面は、必死に逃げ惑う主人公たちがいよいよ逃げ場を失い、敵との距離が徐々に縮められていくような緊張感と恐怖感があります。そして最大音量に達すると、急に静まり返って『死へのいざない』の一節が流れます。それはまるで死後の世界のよう。終始生きた心地のしない、ラスボスにふさわしい恐怖の音楽です。

『死の世界より来たる者』をラスボス戦向けにパワーアップさせたようなイメージの曲ですが、『渾身の力を込めて』の一節が織り込まれていたりとなかなか芸が細かいです。ほとんどのプレイヤーはこの曲を1回しか聴いたことがないでしょうが、是非もう一度聴き直してほしい一曲です。

DQ11

ひるまぬ勇気

主な対戦相手ザコ敵全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★☆☆☆
勇ましさ★★★★☆総合評価★★★☆☆

前半は激しい曲調です。戦いの開始を告げる冒頭の第一音に始まり、戦いの狼煙のようなトランペットのうなり。こういった入り方はドラクエの戦闘曲の典型的なパターンで、DQ11の発売を待ちわびた往年のドラクエプレイヤー達にドラクエの新作をプレイする喜びを感じさせてくれます。

後半は、激しい戦闘の中で主人公たちが活路を見出したかのようにやや明るい曲調となります。スケールを多用していて、踊りながら戦っているような、そんなイメージすら感じさせます。ゲーム中では、通常戦闘の場合は前半部分だけをループし、固定戦闘やイベントなどで使用される場合に限り後半部分まで再生されるという仕掛けがあります。イベント戦闘の特別感を演出するのに一役買っています。

果てしなき死闘

主な対戦相手中ボス全般
激しさ★★★☆☆怖さ★★★★☆
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★★☆

全体を通して徹頭徹尾、不協和音で構成されている不気味な曲です。弦楽器の音色と相まって極限の緊張がもたらされ、その緊張状態から解放されるところが1小節たりともありません。中ボスとの戦闘で使われる曲ですが、早く戦いが終わってくれと切に思わせてくれます。

本作の中ボスは全てがこの曲という訳ではなく、一部では『ひるまぬ勇気』のフルバージョンが使用されています。例えば、序盤のいたずらデビルやデンダ一味などが該当しますが、これらのコミカルな中ボスとの戦いには『果てしなき死闘』はちょっと合わないという判断もあったのかもしれません。それくらい、不気味さが際立つ曲だと思います。

破壊を望みし者

主な対戦相手魔王ウルノーガ、魔道士ウルノーガ
激しさ★★★★☆怖さ★★★★☆
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

冒頭に出てくる4音から成る音型がひとつのモチーフになっていて、この曲の至るところに散りばめられています。この手法はDQ6の『悪のモチーフ』に代表されるようなすぎやま先生の得意技ですね。その点を意識して聴くと、DQ6の『魔王との対決』にも近い印象の曲だなと感じます。

魔王の邪悪さを強調する曲でありながら、かなりアップテンポで、どこか小気味よさも感じさせる面白い曲だと思います。

生死を賭けて

主な対戦相手魔王ウルノーガ(変身後)、邪神ニズゼルファ
激しさ★★☆☆☆怖さ★★★★★
勇ましさ★☆☆☆☆総合評価★★★☆☆

正体を現した魔王との戦闘曲です。『破壊を望みし者』のアレンジとなっていますが、こちらはかなりスローテンポ。『破壊を望みし者』との対比が非常に良い効果を挙げています。

金管楽器が終始メロディを奏でるというド派手な音楽です。特にトロンボーンの力強い音色が印象に残りますね。金管楽器どうしで不協和音を奏でるところは強烈なアクセントとなっていて、生オーケストラで聴いたら相当な迫力があるだろうなと思います。良い意味で耳障りな和音が多く、しばらく経つとまた聴きたくなるという不思議な中毒性を持った曲だと思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。筆者の好みが強く反映されていて、評価に同意できない点も多かったのではと思います。こういう見方をしている奴もいるんだなあくらいに考えていただければ幸いです。

DQシリーズの楽曲は、作品を追うごとにどんどん進化しているように感じます。時代に即した新しい趣向を凝らした曲が次々と生み出されています。いまや、新作のDQをプレイする楽しみの半分以上が、音楽に対する期待感から来ているというほどです。果たして次のDQ10ではどのような素晴らしい楽曲を聴くことができるのか。実に待ち遠しいです。

参考文献

更新履歴